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彼は、僕を書いている。
彼がいつもベッドに入る時刻は、かなり前に過ぎた。
書いては消し、書いては消しを繰り返しているのでなかなか進まない。何を書いているかわからないが、ものすごく真剣だ。この調子で勉強したら、
成績で怒られることも無くなるのに。
彼がペンを置き、僕を読み始めた。どうやら書き終わったみたいだ。
ひと通り読み終えた後、期待と不安が混じった顔になった。
そして、彼は僕を机の上に置いたままベッドに潜りこんだ。
翌朝。彼は、僕をもう一度読んだ。今度は、顔を紅潮させ恥ずかしがっている。
どうしてだろう?
彼は僕を同じ柄の封筒に入れ、封をした。
封筒に宛先の住所は書かれていない。宛先らしきものは、封筒の表の
「○○さんへ」だけ。これでちゃんと相手に届くのだろうか?
彼は僕をノートの途中に挟み、通学カバンに入れた。
授業が終わり、今は放課後。
彼は緊張した両手で僕をつかみ、目の前の女の子に渡そうとしている。
女の子は僕を受け取り、彼は緊張したまま足早に去っていった。
女の子は、僕をポケットに入れた。
ポケットの中には先客がいた。僕と同じように「○○さんへ」とだけ
書かれた封筒が。
「あのー」
『ん?なんだ?』
「どなたですか?」
『どなたってw 俺はお前と同じ者だよ』
「同じ?同じ手紙ってことですか?」
『正確に言うと、目的が同じ手紙だな。お前自分のことがわかってないのか?』
「わかってないです」
『それじゃ教えてやろう。もらえる奴はたくさんもらえる。貰えない奴は
一生に一通も貰えない。俺らはそういう手紙だ』
「貴重なんだか、そうじゃないんだかわからないですね」
『そうだなw』
僕の置かれた状況はわかった。だが、これからどうなるんだろうか?
「これから僕らはどうなるんですか?」
『わからねぇ。読んでもらえるかもしれないし、そうならないかもしれない』
「僕は読んでもらわないと困ります!」
『俺にそんなこと言われても、どうにもならねえんだよ』
先客と話していて気づかなかったが、ポケットに入れられてから続いていた
揺れが止まった。
『どうやらポケットに入れられたまま、服を脱いだみたいだな』
「これからどうなるんですか?」
『さあな、あの子が戻ってくるのを待つしかないな』
やれることがないのでぼーっとしていた。つくづく手紙っていうのは受け身の
存在だなと思う。
ふいに服ごと持ち上げられた。
「女の子が戻ってきたんですかね?」
『どうかな』
僕らは持ち上げられたまま運ばれ、何かの中に落とされた。
そして、水の流れる音がし始めた。
『お前にはかわいそうだが、お互いここで終わりのようだ』
「どうして!?」
『これは洗濯機という服を洗う機械の中だ。俺らは水で洗われる。その先はわかるな?』
「わかるけど、なんとかならないの?」
『ならない。諦めろ』
「そんな・・・彼の想いはどうなるの?」
『お前を書いた奴のことか?そいつ次第だな』
「え?」
『俺らはここで終わりだが、俺らを書いた奴らの想いが無くなるわけじゃない』
「また手紙を書くってこと?」
『正確には書くかもしれないだ』
「それじゃ今回は諦めるよ」
『意外と物分りがいいな』
「また手紙を書いたら、・・・あなたと会える?」
『何を言うかと思ったら。本当は俺とお前は敵同士なんだぞ。仲良くしてどうする?』
「ちょっと楽しかったのになあ」
『・・・まあ、会えるかもしれないな』
「本当に?」
『あくまで仮定の話だ。そろそろ時間だ。』
「それじゃまたね。次はポケットじゃないところでw」
『そうだな。洗濯機に入りたくないもんなw。またな』
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1 コメント:
ちょっとーーーーー
マジうけるんですけどwwww
私に洗濯されたラブレターの彼らじゃない。
いや~こうして読むと悪い事をしたなぁ。
でも爆笑した。
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